http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20141124-00000565-san-bus_all ショウワノート(富山県高岡市)の「ジャポニカ学習帳」は、昭和45年の発売以来、累計で12億冊を販売し、
子供向け学習ノートの代名詞となっている。珍しい植物を表紙写真で紹介しているほか、
百科事典のダイジェスト版を最初と最後のページに掲載し、
子供たちが新知識を身につけられると好評だ。時代のニーズを取り込む努力も怠らず、
幾度かの危機を乗り越えつつ、40年以上にわたりトップブランドの地位を守ってきた。
■ニーズに柔軟に対応
「子供たちが見られないものを写真で紹介することを最優先している」。
ショウワノートの片岸茂社長は、ジャポニカ学習帳の表紙についてそう語る。
表紙写真は4、5年に一度刷新し、同じ品種は二度と採用しない。撮影には多額の費用をかけ、
専属カメラマンの山口進氏が重い機材と寝袋持参で海外に何カ月も滞在する。その過酷さは、
同氏が「アシスタントが定着しない」とこぼすほどだ。
一方、百科事典のダイジェスト版「学習百科」は、協力先の小学館のスタッフと一緒に自分たちでテーマを考え、
事実を確かめたりすることも少なくない。表紙やけい線に採用している目に優しい深緑色のイメージカラーを含め、
こうした特徴は発売以来、ほぼ一貫して変えていない。
今でこそ、子供向け学習ノート市場で約4割のトップシェアを誇るが、発売直後は全く受け入れられなかった。
会社の知名度が低かったうえ、価格が他社の30円に対し、50円と高かったこともあり、あっという間に在庫の山を抱えた。
追い込まれた同社は、残った資金で思い切ってテレビCMを打つことにした。
視聴率の高い時間帯は他の広告主で埋まってしまっていたため、やむなく昼の番組を選んだ。タイトルは「女のうず潮」。
女優の三ツ矢歌子さんが主演する昼メロだった。
「子供は学校にいるのに…」。社内では異論が噴出したが、賭けは「吉」と出る。文具店は家族経営が多く、
この時間にテレビを見ながら休息をとっていたからだ。CMは予想以上の効果を上げ、学習帳の取り扱先が一気に増えた。
■立体商標に登録
2年前には、それまで植物とともに表紙写真で使われていた昆虫が消えた。
教師や母親から、「気持ち悪い」とクレームが寄せられたためだ。
「若い先生が蝶蝶を見て『蛾じゃないの?』と。昆虫採集の機会が減ったせいかな…」。片岸社長は寂しそうに話す。
トップブランドを維持するには、伝統を守るだけでなく、時代のニーズを取り込む柔軟性も必要だった。
今月には小学校高学年向けに新シリーズ「ジャポニカフレンド」を投入した。表紙に子供の顔のイラストを入れた、
「本家」と趣の異なるデザインで、女の子を意識してかわいらしさを強調した。計算用などに使う2冊目の需要がターゲットだ。
片岸社長は「時代に合わせて需要を喚起しないと生き残れない」と話す。
誰もが知る商品だけに、近年は類似商品が出回ったり、大人向けの風俗パロディーに仕立てられ、
イメージが損なわれることもあった。だが、今夏には、商標法などで保護される「立体商標」への
登録という形で長年貫いてきた丁寧なものづくりの努力が報われた。
■国産にこだわり
少子化で市場環境は厳しく、足元の円安で原材料費の高騰にもさらされているが、ジャポニカ学習帳は今も
高岡市の本社工場で作っている。最近は、子供時代に慣れ親しんだ大人が買い求めるケースもあるという
ブランドへの信頼を守るため、片岸社長は「今後も国産を維持したい」と誓う。(井田通人)
ジャポニカ学習帳 ショウワノートが昭和45年に発売した子供向けノート。学年ごとや科目ごとに約50種類がある。
自社で撮影し、世界に1枚しかない植物の表紙写真を採用。自然などの知識を深めるのに役立つ「学習百科」を掲載している。
希望小売価格(税別)は、主力製品のB5判で170円。